「二刀流 徳島の橋カード48橋 吉野川版」の作成とその活用
阿南工業高等専門学校
創造技術工学科
建設コース 教授
森山 卓郎
■はじめに
川の多い徳島県には、様々な橋があります。徳島県では昭和の初めに、「橋を見るなら徳島に行け」と言われるほど、その時代の技術の粋を結集してつくられた当時国内最大級の橋が吉野川や那賀川などに建設されました。その後も徳島県内には、大鳴門橋のような長大橋や環境に配慮してつくられた阿波しらさぎ大橋、河川に架かる橋としては国内最大級の吉野川サンライズ大橋など、大正末期から令和の今日まで様々な大きな橋が架けられました。船が通るときに橋桁が上昇する可動橋の加賀須野橋や第1次世界大戦の際に青島で俘虜となり、鳴門の板東俘虜収容所に収容されていたドイツ人兵士がつくった石造アーチのドイツ橋、祖谷のかずら橋などのユニークな橋もあります。
筆者は、小中学生に遊びながら地元徳島の橋に興味を持ってもらえるように、徳島県板野郡北島町にある建設コンサルタント会社の株式会社エー・アンド・ビーの協力により、「徳島の橋かるた 48橋 全県版」を2021年に700セット作成し、希望者に無料配布しました(図1)。かるたの絵札には徳島県内全域から様々な構造や色の48の橋の写真を用いました。橋の写真は、すべて協力企業が撮影しました。絵札の裏面には、子供にもわかるような表現で、その橋についての説明だけでなく、橋から見た徳島の地理や歴史などの説明文も記載しました。かるたのフチなどの色は、徳島県特産の阿波藍を意識して藍色をベースとしました。
その続編として、「徳島の橋かるた48橋 全県版2」を2022年に700セット作成し、希望者に無料配布しました(図2)。吉野川サンライズ大橋など、前回のかるたで入れられなかった橋や新しくできた橋の写真を用いました。これらのかるたに入れた橋の写真を用いたクリアファイルやカレンダーも作成し、これらも希望者に無料配布をしました。
■橋カードの作成
過去2回の徳島の橋かるたの番外編的な位置付けとして、2023年4月には、公益財団法人 阿波銀行学術・文化振興財団の2022年度助成と公益社団法人 土木学会の公益増進資金助成により、吉野川に架かる橋の写真を用いた「二刀流 徳島の橋カード48橋 吉野川版」を700セット作成しました(図3~5)。現在、吉野川に架かる46の橋だけでなく、既に撤去された旧穴吹橋と大川橋を入れた48の橋の写真を用いました。
このカードは、かるたとしても遊べるだけでなく、独自のカードゲーム「橋並べ」も遊べる二刀流になっています。「橋並べ」とは、トランプの七並べのように、河口の吉野川サンライズ大橋(1番)から山間部の大歩危橋(46番)までの番号を入れた橋のカードを順番に並べて早さを競うものです。番号が入っていない旧穴吹橋と大川橋はこのゲームには使用しませんが、かるたで遊ぶときはこの2枚も入れた48枚のカードを使用します。
■橋カードの配布
今回もまず、阿南高専のホームページや徳島新聞でのアナウンスにより、希望者に無料配布する旨のPRを行いました。その後、NHK徳島放送局の取材の依頼がありましたので、同局のニュース番組「とくしま645」で紹介していただきました。徳島県内だけでなく、四国4県に流れる朝のニュース番組「おはよう四国」でも紹介していただきましたので、その効果もあり、県内外の多くの方から欲しいという連絡をいただきました。
「徳島の橋ウォッチングをしたい」、「子供に橋のことを教えたい」、「自由研究に活用したい」などの声が寄せられました。前回までの「徳島の橋かるた」と同様に、徳島県立図書館から寄贈の希望もありました。他にも、大鳴門橋架橋記念館エディからも寄贈の希望の連絡がありました。
本校の校長や教員が県内のほぼすべての中学校に広報活動で訪問した際には、徳島の橋カードとクリアファイルを渡してもらいました。筆者自身も阿南市役所に届けて、市内すべての小学校と児童館に配布を依頼しました。
一般の方からは、子供や孫がいる方から毎回欲しいという連絡がたくさんあります。年配の方だけでなく、小さい子供からお礼のお手紙をもらうこともありました。
■橋カードの活用
2023年8月に、阿南高専中学生一日体験入学において、この橋カードを活用した講座を行いました。建設コースの講座に参加した中学生が8テーマに分かれたため、このテーマに参加したのは4名だけでしたが、皆しっかりと取り組み、楽しんでくれたようでした。そのうちの1名は、2年前に県内の中学校で「徳島の橋かるた」の出前授業を行ったときに参加していた生徒でした。
2023年10月には、県内の中学校の1年生28名に、このカードを活用した出前授業を行いました。橋カードを用いた「橋並べ」だけでなく、「橋かるた」もやってもらいました。いずれも6テーブルに別れて実施し、各テーブルの勝者で最後に決勝戦を行いました。生徒は皆、熱く盛り上がってくれました。終了後にアンケートを行ったところ、「すごく楽しかった」や「橋のことを知ることができてよかった」など、良好なコメントが多く見られました(図6)。担任の教諭から後日、生徒の感想を1枚にまとめられたものをいただきました(図7)。
このカードで遊んだ生徒さんから、未来の橋梁技術者が誕生してくれば幸いに思います。