■CNCP創立10周年にあたって
シビルNPO連携プラットフォーム 代表理事
山本 卓朗
CNCP:シビルNPO連携プラットフォームがスタートしたのが2014年(平成26年)3月ですから、早くも10年が経過しました。この間多くの皆様にご支援頂き、ささやかながら切れることなく活動を続けてこられたこと、改めて御礼申し上げます。10年間は試行錯誤の連続で今日まで来てしまいましたが、取り組んできたいくつかの課題について、出来たこと出来なかったことを述べて一区切りとし、今後の活動の原点としたいと思います。
●中間支援組織をめざして
発足時の設立趣旨は、ホームページに記載していますが、その一部を紹介しますと「・・・一方、社会基盤形成にかかわる分野においては、関連するNPO法人そのものの未成熟があり、かつ様々な主体が双方向に連携・協働していくシステムの未発達がある。そのような視点で孤立的に活動してきた関連NPO法人の連携・ネットワーク化の必要性であり、その具体策としての中間支援組織の設立であった。」と書かれています。このような認識のもとで様々な活動にトライするなかで、全国のシビル系のNPOの動向をみて来ますと、どこも地域性の強い活動が主体であり、必ずしも“支援や連携”を望んでいるわけではない、という実態もわかってきました。中間支援組織は、「情報交流、政策提言、調査研究、事業化、人材開発および関連組織とのネットワーク化などの幅広い活動を通じてNPO法人の基盤強化をはかり、行政や企業、教育・研究機関、そして地域・市民組織とのパートナーシップを通じて、より良い地域社会の構築を目指す」ものですが、当法人の活動実績は、まだまだ試行錯誤の段階と認識しています。
●事業化NPOの難しさ
独立した組織としては、まず運営・活動資金が必要ですが、最初から事業収入はあり得ないので、法人・個人会員会費の他、多くの企業に賛助会員になって頂き、活動を進めてきました。しかし事業収入や参加費による独立経営を模索するため「事業化推進部門」を設け、様々な事業に挑戦してきました。「共創プラットフォーム事業化研究会」を皮切りに「CNCPアワード」と称したソーシャルビジネスに取り組んでいる活動グループを顕彰する提案コンテスト、またインターネット上で業務委託者と業務受託者のマッチングを支援する建設系 NPO 専門のクラウドソーシング事業「シビルマッチ」など、やむなく中断している案件もふくめて経験してきました。一方別のサービス提供部門では、「NPOファイナンス研究会」、「シニアパワーアップ研修セミナー」さらに「市民活動コーディネーター養成講座」など研修後に人材データベースが作れるようになればとの思いで、様々な取り組みを行ってきました。
残念ながら、事業化はパワー不足で、賛助会費からの脱皮を図ることが出来ずに今日に至っていますが、その後の部門再編成で、現在取り組んでいるプラットフォーム事業で、案件ごとの具体的な資金調達を模索しているところです。
●CNCP通信 皆勤の10年
当法人のミッションとして、情報発信はもっとも重要な事項であり、発足時から「CNCP通信」の毎月発行を欠かさず継続してきました。おかげさまで10年目の4月に第120号まで参りました。ホームページも改善を重ね、今月から、CNCP通信の内容検索も出来るようになりました。振り返って見てみますと、現在でも十分に通用する豊富な情報源であり、その活用もPRしたいと考えています。
●土木学会との連携強化を
当NPOは、4年にわたる土木学会での委員会・協議会の活動を母体にして生まれ、現在も連携して活動を続けています。今後は、土木学会「インフラパートナー制度」の充実なども新たな取り組み課題として知恵を出していこうと思います。
●「土木と市民社会をつなぐ」―基本のテーマとして
土木が深く関わっている公共事業の仕組み故に、どうしても土木の世界と市民社会との接点が希薄になることが私の長年の問題意識でした。そんな中で、市民協働を推進している多くのNPOの連携を図りたいとの思いから立ち上げたのがCNCPすなわちシビルNPO連携プラットフォームでした。
この10年、多くの皆様にお世話になりました。心から感謝申し上げます。
土木工学という名称は、明治の初めにcivil engineeringの訳として登場しました。でも私は、訳として「市民工学」がふさわしいと思っています。「土木ということば」については、思いを同じくする小松淳さんに2年間に亘って本誌で連載頂いています。ぜひ検索してください。
「土木と市民社会をつなぐ」活動をこれからもよろしくお願いします。
■CNCP設立/ホームページ開設時
皆さん、NPO法人「シビルNPO連携プラットフォーム(CNCP)」のホームページを訪問いただきありがとうございます。
CNCPは土木を専門とする技術者が中心となって活動していますが、そもそも“土木・どぼくって何?”というと、専門家である私たちでさえ答がまちまちになってしまいます。土木ということばを辞書で引きますと、“・・・などすべて木材・鉄材・土石などを使用して構成する工事”などと書かれていますが、現在私たちが関わっている幅広い分野をうまく表現していないと考えています。このため“土木”ということばのルーツ探しから始めようと、多くの学者や仲間が中国・日本の古文書、文学・日記、梵鐘などを調査研究していますが、その一端を「CNCP通信」第49号から連載していますので、ぜひご覧ください(当ホームページにも掲載)。
一方、ローマ時代の土木は“すべての道はローマに通ず”道路網をはじめ軍事目的であり、軍事工学military engineeringでしたが、街が発展するにつれ非軍事工学の総称としてのcivil engineeringが生まれました。工学は時代とともに土木、建築、機械、電気、化学、金属、冶金などと細分化していきますが、土木工学(civil engineering)は、その原点としての総合性を持っている、すなわち市民工学と言った方が判りやすいのではと考えています。このような議論を進めるうちに、土臭い男社会と思われがちな土木社会でも女性の活動が顕著になってきました。30年前には「土木技術者女性の会」が発足、自らを“どぼじょ”と呼んでその魅力をPRする写真集(土木女子!:清文社)も出して頑張っています。
さて、当NPO法人はCNCP(Civil NPO Collaboration Platform)と略称していますが、全国の建設系NPOと幅広い連携をめざす中間支援組織であるとともに、市民工学の原点に立ち返って、“土木と市民社会をつなぐ”ことを活動の核としています。そのために、様々な分野での専門家や市井での活動を行っている皆さんの参加を期待しております。
平成時代の30年が過ぎて、これからの我が国では、人口減少や国際化の進展そして災害の巨大化などにより新しい課題が次々と発生すると考えます。これらの課題解決のためには、政治や行政だけでなく、企業レベル・市民レベルでの連携・協力がますます必要になってきます。
CNCPの活動もささやかではありますが、皆さんとともに社会課題の解決に努力していく所存です。
代表理事 山本卓朗