北海道の未来のために、これからも地域とともに

北海道の未来のために、これからも地域とともに北海道の未来のために、これからも地域とともに

(株)ドーコン 交通事業本部交通部 都心交通企画室 副主幹
特定非営利活動法人ポロクル 事務局長
山本 純江

■シェアサイクル「ポロクル」

みなさんは、シェアサイクル「ポロクル」をご存じでしょうか?2011年から札幌都心部で開始された自転車のシェアリングサービスです。当社は、そのポロクルの事業運営を全面的にサポートしています。

北海道札幌市の積雪寒冷地という特性上、営業期間は4月上旬~11月中旬までの約7か月間だけとなっており、2025年度は60ヵ所以上の専用自転車駐輪場(以下、ポート)、600台超の自転車で営業をしています。なお、ポロクルの「ポロ」は札幌、「クル」はサイクル(自転車)を意味しています。

今回は、「なぜ(株)ドーコンがポロクルの事業運営をサポートしているのか?」についてお伝えします。

写真 シェアサイクル「ポロクル」

■「ポロクル」の草創期 ~2008年-2013年 ゼロからの挑戦~

2008年頃の札幌都心部は自転車利用が急速に増え、歩道を勢いよく走行する自転車が歩行者の安全を脅かし、放置自転車が歩道に溢れ点字ブロックを塞ぐ等、まちの景観も悪化。また、地球温暖化、人口減少といった社会的課題も顕在化していました。

この状況に問題意識を持った(株)ドーコンの有志たちが「チーム自転車創業」を立ち上げ、総合コンサルタントとしての新たな挑戦として、東京大学の羽藤英二教授(当時は准教授)の指導を仰ぎ「北海道モビリティ研究会」を発足させました。新しいモビリティである「シェアサイクル」が都市や社会の課題解決にどう役立つのか議論と、株式会社NTTドコモ(以下ドコモ)との共同実証実験を重ね、2011年に(株)ドーコンの子会社として「(株)ドーコンモビリティデザイン」を立ち上げ、シェアサイクルサービスを開始しました。

自転車をシェアするという概念がまだ浸透していない中の挑戦であり、全国的にもシェアサイクルの先駆け的な存在と言える取り組みでした。

写真 社会実験の様子(2009年)

シェアサイクル事業を展開しながら、地域課題解決を目指した活動も実施しました。

現場運営は、環境問題に取り組むNPO法人ezorockに依頼し、所属する学生を中心とした「ポロクルクルー」と呼ばれる若者たちが担いました。彼らは自ら考え、現場を運営しながら、ハンドサインでドライバーとコミュニケーションをとって車道の左側走行を実践しました。

また、札幌大通まちづくり(株)と連携して、歩道での自転車押し歩き啓発活動やまちの賑わい創出の取り組みを進めるなど、「まちの未来」について考え行動してきました。

写真 ポロクルクルーの活動

■「ポロクル」の転換期 ~2014年-2018年 再構築への決断~

シェアサイクル事業をスタートしたものの、事業採算性は想像以上に厳しく、(株)ドーコンモビリティデザインを解散するという判断に至りました。それでも「事業、活動を継続したい」という強い想いから、2014年11月に北海道大学の萩原亨教授(当時)を理事長に迎え、NPO法人として事業活動を続ける道を選びました。2016年には、貢献活動の公益性が高く評価され、札幌市の認定を受け「認定NPO法人ポロクル」へとステップアップしました。

しかし、設備やシステムの老朽化や不安定な収支構造が大きな課題となり、事業の継続が難しい状況となりました。この状況を打開するため、2019年にシェアサイクル事業の全国展開を進めていた(株)NTTドコモのオペレーションシステムへ転換することにより収支は大きく改善、持続可能な経営に向けて希望を持つことができました。

同年には、シェアサイクル事業を通して市民や観光客の行動の範囲拡大や促進を図るとともに、交通マナーの普及・啓発も併せて実施する等、地域活性化に貢献したと評価され、国土交通省から「自転車活用推進功績者表彰」を受賞しました。

図 認定NPO法人ポロクルの活動理念

■「ポロクル」の成長期 ~2019年- 未来への歩み~

利便性が格段に向上したことや、地域との連携も増えたことで、2024年度のシェアサイクル事業は自転車約600台、ポート約60カ所でサービスを提供し、会員数は約9万件となりました。

自転車の総利用回数は51万回を超え、1台あたりの1日平均利用回数(回転率)は4.2回と全国でもトップクラスを誇ります。日常の通勤や通学での利用のほか、ショッピングや食事、観光などでも幅広く使われています。今年度も、前年に比べて約10%の利用者増加が見られ、引き続き増加傾向で推移しています。

同年には、ポロクルがシェアサイクル関連事業を通じて、まちづくり・ひとづくりに貢献し、地域の交通システムとして成長してきたプロセスが評価され、「シェアサイクルで街をささえ人がそだつ~札幌市での自転車文化の鼓動~」と題して、国際交通安全学会(IATSS)2024年度学会賞(業績部門)を受賞しました。

■「ポロクル」が目指すもの

ポロクルは行政が運営に関与していない、日本国内では数少ない完全民間による事業です。そのポロクルがここまで持続、発展し、地域に浸透できたのは、創業当初から、シェアサイクル事業の枠を超えて、「まちづくり・ひとづくり・魅力づくりに貢献する」というミッションを自らに課し、様々な公益活動に取り組んできたことが大きいと考えています。

2023年度には、「札幌市自転車活用推進計画」においてシェアサイクルの利用促進が重要施策として位置づけられ、今後はより一層、行政や関係団体と連携して、社会情勢や市民意識の変化に応じたサービスを展開していくことが求められています。

ポロクルはこれまで、未来に向けた地域の交通システムとして成長するだけでなく、地域交通に関する一連のまちづくり活動に取り組んできました。たとえば、国内初となるシェアサイクルと公共交通の複合経路検索サービス「mixway」の共同開発や、行政や企業との交通安全啓発活動の実施、ヘルメット着用促進に向けた取り組み、行政との防災協定の締結、環境に配慮したポロクルユーザー参加型のゴミ拾い活動、「第9期北海道総合開発計画」を周知するためポロクル特別仕様車を導入するなど、『ポロクル』が様々な地域社会の課題解決に役立つよう取り組んでいます。

※北海道総合開発計画:北海道の資源や特性を活かして国の課題解決に寄与するとともに、地域の活力ある発展を図ることを目的に閣議決定される計画

図 ポロクル特別仕様車 たった1台の「9期計画号」

■おわりに

こうした活動は、まさしく、総合建設コンサルタントゆえの視座に基づくものであり、その想いが形となって、利用者をはじめ、民間企業・団体、学識者、行政など、多くの方々から大いなるご支援をいただくことができ、現在につながっていると考えています。

建設コンサルタントの役割は時代とともに常に変化し、多様化していきます。当社は北海道に根差した総合建設コンサルタントとして、北の大地で培ってきた技術と経験、そして様々なつながりを活かし、北海道の未来のために、地域に寄り添い、ともに歩み続けながら、豊かな人間環境の創造に貢献できるようこれからも取り組んでいく所存です。

(株)ドーコン ホームページ https://www.docon.jp/

認定NPO法人ポロクル WEBページ https://porocle.jp/npo_porocle/

シェアサイクル「ポロクル」 WEBページ https://porocle.jp/

ポロクルが作成している自転車のルール啓発動画 https://porocle.jp/rule-bicycle/rule_movie/