国際憲章「泳げる都市の川」― Swimmable Cities ―

国際憲章「泳げる都市の川」― Swimmable Cities ―国際憲章「泳げる都市の川」― Swimmable Cities ―

日本河川協会 理事
NPO法人あらかわ学会 事務局長
三井 元子

1.はじめに

2023年11月号Vol.115に「泳げる荒川の復活をめざして」というコラムを書く機会を得て、東京を流れる大河川、荒川(放水路)での遠泳大会を同年9月に開催した経緯をお話ししました。荒川下流部は、明治の終わりに何度も大きな洪水に見舞われたため、北区岩淵で分岐して広い川を作り海へ流す計画を立て、19年かけて川幅500m、延長22㎞の放水路が完成しました。完成の1930年(昭和5)には、放水路沿いに12か所以上の水練場ができ、水泳指導者がこどもたちに水泳を教え、競技や遠泳大会をして楽しんでいたといわれます。1938年(昭和13)頃から戦争が激しくなり、終戦後は復興景気と共に水質汚濁が進んで、泳げない状態が約80年も続いていました。しかし、近年では水質も向上して、水浴場の指標に使われるふん便性大腸菌群も低い値になっていたことから、NPO 法人あらかわ学会が遠泳大会復活を提起したのです。

2.荒川遠泳大会の復活

2023年9月16日、プレ大会として川泳ぎに慣れている方たち11人で850mを泳いでみたところ、水質は良好、気持ちよく泳げました。そこで、11名で実行委員会を立ち上げ、本大会の準備に入りました。

2024年9月14日、公募に応じた37名と共に1500m遠泳大会を実行し泳ぎ切りました。パトロール艇2艇、伴走艇2艇、Eボートによる応援や陸支援などの32名がこれを支えました。

あらかわ学会が、遠泳大会復活をめざしたのは、川中に関心を持つ人々を増やしたいと思ったからです。荒川が再び泳げる水質にまで回復したことを共に喜び、さらに川をきれいにしていくにはどうしたら良いのかと考える人々を増やしたいと思っています。

その後、朝日新聞SDGsアクションのデジタル記事「地域を再生するアーバンスイミング 世界での流行とニューヨークの最新事例を紹介」を目にする機会があり、世界の都市で泳げる川にするための運動が進んでいることを知りました。さらにその記事で「泳げる都市の川運動」が起こっていることも知り、大変興味を持ちました。目的とする処があらかわ学会と同じと思ったのです。

この団体はSwimmable Citiesコレクティブという名称で2024年7月、国際憲章を提起して、多くの国の都市や市民団体がこれに加盟しました。「泳げる都市」を増やしていこうというムーブメントです。この団体の共同代表は、オーストラリア、フランス、イギリス、ドイツ、アメリカから参加しています。2025年6月には、オランダのロッテルダム市と共催で一般公開された初回のロッテルダムサミットを開催し、3,000人が参加しました。このサミットは国連生態系回復10年の一環として開催されたものです。代表はインタビューに答えて、「川の健康は地球全体の健康にとって不可欠です。川は文化的なステークホルダーであり、社会的な活性化役であり、皆が集まる場所です。さらに重要なのは、活気ある生態系を維持し、水生生物にとって重要な生息地を提供し、生物多様性の保全に寄与していることです。 健康な川は、気候変動への防御手段となり、費用対効果の高い洪水対策と清潔な水へのアクセスを提供します」と話しました。

3.あらかわ学会、国際憲章“Swimmable Cities”に加盟!

2025年度の荒川遠泳大会は9月6日に予定されていましたが、前日に台風による降雨があったため、やむなく中止となりました。しかし、9月1日、Swimmable Citiesの共同代表であるドイツのTim Edler氏から連絡があり、日本で同じような目的で活動している団体があれば来日の際に会いたいと言って来ました。9月10日、江東区の船番所資料館会議室で話し合いの場を持ち、意見交換をし、意気投合しました。

そこで、11月のあらかわ学会理事会で、Swimmable Citiesに加盟することを決定し、2025年12月20日正式に加盟団体として登録されました。日本の加盟団体第1号です。世界とつながりながら、Wellbeingな荒川を目指していきたいと思っています。

Swimmable Cities • Urban Swimming Culture

Tim Edlarさんと実行委員会メンバー

Swimmable Cities ,国際憲章の10の共通原則

1. 泳ぐ権利
2. 自然の権利(ワンヘルス)
3. 都市水泳文化
4. 水は神聖である
5. ルールの書き換え(方針)
6. 水泳場における民主的参加
7. 再接続と回復力
8. 新たな経済的機会
9. ウェルビーイングの利益、文化、知識の共有
10. 今日、明日、そして未来の世代のための管理