現場から発信する、市民の心に届かせる贈り物
佐藤工業株式会社 土木事業本部
副本部長
岩橋 公男
“贈り物”は、贈る側の気持ちがどれだけ込められるかは、とても大切ですが、その気持ちが、贈られる側の心にどれだけ伝わるのかは、気持ちを込めれば良い、ということとは別の話ではないでしょうか。
贈られる側のニーズに合っているかどうかで、贈り物の価値は、決まるということだと思います。
私が、「土木の広報」で心がけてきた原点には、この贈り物の話があります。
例えば、現場見学会。現場の凄さや苦労を伝えようとする時にどのように伝えるか。一般の人が判る物差し(ビルなら何階?とか、繋げたらどこからどこまで行ける長さ?など)で表現したり、暮らしの中で実感できるような説明や、どんなことを知りたいのかを探ったりすることなどを心がけていました。 そして、活動の行く先には、広く一般の方がインフラへの理解を深めて、この国の暮らしが未来永劫「安全・安心・快適」であり続けることを願っています。
■1|現場見学会&出前授業
私が最後に担当した現場では、現場見学会は、6年間で436回開催しました。
見学会のポリシーは、「①1人からでも受け付ける。②現場の工程は変えない。(ありのままを見せる)③常に安全通路がある状態を保つ。④常に整理整頓が行き届いている状態を保つ。⑤出会ったら必ず挨拶をする。⑥万が一に備えて保険をかける。」
として、きれいで、わかりやすく、安全な見学を心がけていました。(現場の効果として、整理整頓・安全通路・見える判る表示が常にできていました。)
小学校の見学会では、事前に授業時間をお借りして、学校に出向き、土木の話、“仕事とは”の話をして、現場のことは、難しい話はせず、見学の時のポイントだけを話して、見学会への興味を膨らませる様にしてきました。
見学会終了後も、感想 出前授業風景
や質問等を生徒とやりとりさせてもらい交流を深め、ある小学校では、卒業式に来賓として出席もさせてもらい、涙させて頂いたこともあります。
また、見学会とは別に「土木」「仕事とは」のことでの出前授業も行い、教師たちからも「学校では、なかなか教えられないこと」と感謝をして頂きました。 地元の方の見学会を積極的に開催し、反対してきた人達からは、「こんなに凄いことをしていたのか。」
「これでは、うるさくても仕方が無いか。」とか「これができたらこの町の誇りだ。」とかの声を頂きました。現場は、とかく閉ざしたくなりますが、悪いことをしている訳ではないので、見せることも大切だと思います。(特に懸命に作業されている方々の姿を見て頂く。)
■2|仮囲いを利用した展覧会
現場の仮囲いは、近年はアドフラットが主流になり、それを利用したPR等をよく見かけるようになりました。郷土のPRや、デザインペイント、地元の子の絵等さまざまですが、工事中ずっと変わらなかったり、何を伝えたいのかが、判らなかったりということも多い様に感じてもいます。
私は、地元とのふれあいとして活用するようにしてきました。
小学校、幼稚園等に出向いて子ども達の絵や粘土細工等をデジタルカメラで撮影し、A3×4枚に分割拡大印刷し、それをラミネート加工(安価、現場でできる)して仮囲いに掲出しました。
そして、2ヶ月に一回張り替えます。そうすることで、多くの子ども達の作品を飾ることができます。選ばれた子だけでなく全員の子の作品が飾れ、「次は僕の番だよ」との声や、作品の前でご家族での記念写真撮影も多く見受けられます。また、近隣の方からは、「次はどんな作品か楽しみ」との声もあります。デジカメでの撮影なので、絵だけでなく立体の作品も掲示できるメリットもあります。 一度きりの絵をペイントしたりするのは、こちら側の「やりました」という自己満足ではないかと思うのです。張り替える方法は、喜ばれる活用としてはとても良いと思っています。(現場職員は、大変な面もありますが)
■3|現場PR展示室
近隣住民の皆様から大反対されていた現場で、工事への理解をして頂くことを目的とした展示室をつくりました。25m2程度の小さな部屋ですが、数々の工夫を凝らし、近隣のみならず遠方からも訪ねて来られるような施設となりました。
コンセプトは、「①気軽に出入りできる。②できるだけお金をかけない。(反対している人への配慮、手作り感の創出)③リピーター獲得(展示内容の随時更新)」として、近隣、発注者、各団体、マニア等からの高評価を頂き、来場者何万人イベントを開いたりもしました。
展示内容は、現場の完成模型、機械の模型、現場の説明、建設車両のミニカー、各種現場のビデオ(発注者、当社、他社等からの提供)、現場内の進捗状況写真(路上からでは見る事ができない世界)、子どもが遊べるスペース(建設系のおもちゃ等)、お絵かき用ホワイトボード(くずが出ないペン使用)、書籍や絵本(建設関係、現場に合わせた物)、などで、状況写真は一月おきには交換し、書籍、絵本、おもちゃ等は、随時追加をしていきました。それを楽しみに来られるリピーターも多く、SNSにより口込みで広まっていき、来場者が増えていきました。また、地元見学会と合わせて、近隣からも評価され、多くの方が、反対から協力へと変化していきました。
全国の現場で、現場からの“贈り物”が多くの方に届けられることを祈念いたします。