わかり易い土木 第37回 河川の話 日本の河川災害対策(6)防災訓練

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わかり易い土木 第37回 河川の話
日本の河川災害対策(6)防災訓練

アジア航測株式会社 事業推進本部
社会インフラマネジメント事業部
大友 正晴

今回は「防災訓練」についてお話します。私自身は、防災訓練については今まで他人事のように感じていて、あまり真面目に取り組んでこなかったような気がします。しかし最近のマスコミの報道でなどで、被災の状況がたびたび報道されることにより、災害の発生がより身近に感じられてきました。常日頃から災害発生時に自身がどういう行動を取ったらいいか、シミュレーションを行っていくことは非常に重要なことです。実際にこんなことが有りました。ある官庁の一事務所で災害時の非常参集訓練を行いました。その参集訓練は、災害発生時に職員がどのように行動したかをモニタリングするなど、個々の行動に着目した訓練でした。その時はたまたま訓練の1週間後に地震が発生したと聞いています。職員の方々は訓練直後のことでもあり、素早く適切な行動がとれたことを聞きました。このことから私自身も災害発生時の行動をシミュレーションし、常日頃から訓練を行うことで、非常のときに備えていきたいと思います。

前置きが長くなりましたが、防災訓練に対して皆様の自覚をもって頂けることが自分自身を助けるための第一歩だと思います。


9月1日が防災の日ということは誰もがご存じのことと思います。この日は、ちょうど100年前の1923年9月1日の関東大震災が発生したことにちなんで制定されました。また、9月1日は、立春から数えて210日目にあたります。私は小学生の頃に教わったのは、この210日(にひゃくとおか)、220日(にひゃくはつか)頃は台風がよく襲来する頃でもあると昔から言われてきました。昭和35年(1960年)当時の内閣は、災害への備えを怠らないように9月1日を「防災の日」と制定したそうです。その後、9月1日には全国で防災訓練を行なう日となっています。以下にその内容を紹介します。

訓練とは

辞書によると、「習熟させるため、実際にそのことをさせて鍛えること」となっている。あることを教えて、継続的に練習することで体得することで、能力・技能を体得させるための組織的な教育活動をさすこともあります。

国の行政機関、地方公共団体、その他の公共機関等の防災関係機関の災害への対応に関しては、災害対策基本法、防災基本計画等に基づく防災訓練を行うことが定められています。防災訓練実施における訓練の企画、基本方針、国の訓練次項、地方公共団体の訓練への留意点等を示した総合防災訓練大綱を毎年の中央防災会議にて決定されます。

◆防災訓練と避難訓練防災訓練は、災害などに備えた訓練全般をさしますが、同じような言葉で避難訓練があります。文字通り避難行動に関する訓練ですが、災害に限らず、戦争や犯罪などに対しての非難行動も含まれます。
  • 総合防災訓練

毎年の9月1日防災の日には、総合防災訓練大綱に基づく「総合防災訓練」が行われています。令和4年度の総合防災訓練では、東日本大震災、大雨、潮位変化等の既往災害や新型コロナ感染症拡大防止対応など等を踏まえた訓練が行われました。この年の総合防災訓練大綱に次の内容が記載されていました。

1.総合防災訓練の目的

防災訓練は、防災関係機関の災害時の応急対策に関する検証・確認と住民の防災意識の高揚を目的としています。具体的には次の5つのことが行われます。

  • 防災訓練を通じて、防災関係機関の平時からの組織体制の機能確認、評価等の実施と実効性検証
  • 防災訓練を通じて、雑賀時における各防災関係機関の適切な役割分担と相互に連携協力した実効性ある対応方法の確認。特に国と地方公共団体の関係強化、平時からの相互の連携強化を図る
  • 防災訓練の実施で、防災計画等の脆弱点や課題の発見、防災計画等の継続的な改善を図る
  • 住民一人一人が、「自らの命は自らが守る」という意識を持ち、自らの判断で避難行動等をとれる社会の構築、防災訓練に際して日常及び災害時において「自らが何をすべきか」を考え、災害に対して十分な準備ができるように、住民の防災に関する意識高揚と知識の向上を図る

行政機関、民間企業を通じた防災担当者の平時からの自己研鑽・自己啓発等が社会の災害対応力向上に直結することを鑑み、各防災担当者が日常の取組について検証・評価するきっかけとする

2.総合防災訓練の実施概要(防災の日関連)

(1)政府関係の総合防災訓練

●政府本部運営訓練

内閣総理大臣を始めとする全閣僚や関係省庁及び関係地方公共団体等と連携して、情報収集、対応・対策判断等を行うべく本部の運営訓練の実施。

●閣僚、省庁職員の非常参集訓練

全閣僚の徒歩等による参集、関係省庁の職員の安否確認及び非常参集訓練の実施。

●被災地への現地調査訓練

被災地(この年は千葉市)に対して現地状況の調査団を派遣、調査等の訓練を実施。

(2)地域ブロック広域訓練

首都圏では、九都県市合同防災訓練を実施している。首都直下地震を想定し、首都圏ブロックにおける関係府省庁、関係省庁支分部局、関係地方公共団体、その他公共機関、ライフライン・インフラ事業者、マスコミから構成される協議会等が主体に広域的な実動・図上訓練を実施している。

3.地方公共団体等における防災訓練等

災害時に最も住民に近く対応を行わなければならないのは地方公共団体です。その役割は重要かつ広範囲にわたります。そのため地方公共団体の防災訓練の重要性は高く重いものと言えます。

とくに、地域住民が防災を考え、具体的な行動を取れるよう災害リスク情報や災害時にとるべき避難行動等自助の周知徹底に努める必要があります。

2019年豊川・矢作川連合総合水防演習、広域連携防災訓練(国土交通省HPより)

また、地域の防災力の強化、知久防災計画に基づく訓練等、自主防災組織による防災訓練の実施、防災拠点管理者や地域の事業所と地域住民との連携による防災訓練など共助の醸成が必要となります。

地方においては以下の項目も必要になります。

・NPO・ボランティア等との連携:災害時には彼らとの連携は必要で、関係機関との連携、受け入れ訓練及び環境整備等が必要です。また、避難所の運営訓練等も必要と言われています。

・避難指示等の発令・伝達:災害時の避難指示等の発令に関しては、災害発生の時に問題とされていますが、発令の意思決定・伝達をし、住民が適切に避難行動をとれるよう訓練することが示されています。これには、住民の十分な理解と、住民への的確な情報伝達が必要と考えられます。

・要配慮者の避難支援訓練:前述と併せとくに要支援者に対する避難誘導、避難所開設・運営等の訓練も実施すべきとされています。

2019年豊川・矢作川連合総合水防演習、広域連携防災訓練(国土交通省HPより)

紙幅がなく訓練のすべてを紹介できませんが、自分の命は自分で守る観点からも、防災訓練の重要性をご理解いただきたいと思います。これをもって水害に関しての最後の結びとさせて頂きます。

◆沖縄県の防災訓練(観光機器管理体制運用図上訓練)沖縄は皆さんご存知の通り観光事業は重要な産業となっております。そこで、災害時の観光客への対応、観光事業者の対応、自治体の対応などに関して訓練を行ってきました。令和4年11月にも実施されました。この訓練は県と(一財)沖縄観光コンベンションビューローが主体でコンサルタント等の協力を得て、ロールプレイングによる図上訓練を行っています。33の団体と112名の参加者で、初動対応・連携と観光客等の帰宅困難者の支援・復興について演習しています。
(一財)沖縄観光コンベンションビューローHPより