わかり易い土木 第36回 河川の話 日本の河川災害対策(5)水防団

わかり易い土木 第36回 河川の話 日本の河川災害対策(5)水防団わかり易い土木 第36回 河川の話 日本の河川災害対策(5)水防団

わかり易い土木 第36回 河川の話
日本の河川災害対策(5)水防団

アジア航測株式会社 事業推進本部
社会インフラマネジメント事業部
大友 正晴

前回まで「流域治水」について勉強してきました。流域治水では、国など河川管理者の対応ばかりでなく、流域の住民一人一人の防災意識を求めていました。災害において先ずは、共助、自助が重要です。そこで、共助の一つである「水防団」についてと自助などのための水防訓練について勉強しましょう。


「水防団」と言う言葉を聞いたことがある人がいると思います。水防団は昭和24年(1949年)の「水防法」に基づき設置された組織です。しかし、都市部に住んでいるほとんどの人は水防団のことをあまり知らないと思います。

■水防とは

水防とは、「自らの安全は自らが守り、地域の安全は地域が守る」という自助・共助のことで自衛の減災活動のことです。

■水防団

水防団は、水防の中心となる組織のことです。また、水防団は、水防管理団体として水防の責任を有する市町村、又は水防に関する事務を共同に処理する市町村の組合、若しくは水害予防組合が設置する団体です。水防法で市町村等の水防管理団体は、その区域内にある消防機関が水防事務を十分に処理することができないと認められる場合に、水防団を設置しなければなりません。地方に行くと地区の消防団がイコール水防団となっていることがありますが、水防法があるからです。

■水防団の活動

水防団の活動には、水災害を警戒、防御、被害の軽減、巡視活動、水防工法、避難誘導、救助活動などがあります。水防団の活動の主な活動を紹介しましょう。

(1)平常時の活動

どのような災害においても、災害が発生する前に何をしておくべきかが重要なことです。同時に、対象物等の状況を常に把握しておくことも大事な要素です。水防団においても平常時の活動を行うことで、水害への備えが常に行われています。

巡視:河川や海岸などを巡視し、水防活動上危険であると認められる個所がある時には、直ちに管理者に連絡して対応を求めることもあります。

点検:水防資材の点検・備蓄量の確認等を行い、不足な資材については補充します。また、水害時に備えて砂や銃器などの調達についても行っています。

訓練:出水時等の出動や、さまざまな水防工法などの訓練を行い、頻発する災害に備えています。

継承:一般市民や次世代を担う子どもたちへ水防の継承を行います。

水害に備えて様々な準備を行うことにより、大きな被害が防げたり、被害を最初減にすることができるのです。特に訓練は常日頃から実施することが必要で、次回で詳細を説明します。

(2)洪水時の活動

洪水が発生した時には水防団は、命がけで「被害を最小限に食い止めよう」と迅速に活動します。水防団は次に挙げるような水防工法を実施するとともに、住民の避難誘導や避難救助をも行います。

次に代表的な水防工法を紹介します。

積土のう工:河川水位が上昇し、水が堤防を越えそうな時に堤防天端に土のうを積み、越水を防ぎます。土のう積工は一般に多く採用されて効果のある工法です。多量に使用される土のうの準備をすることを土のう拵え工とも言います。

木流し工:堤防の河川側斜面が崩れるのを防ぐために、枝葉の多い木を川側の堤防に設置して、川の流れが堤防にあたる流速を緩やかにして、堤防が崩れるのを防ぐ工法です。

釜段工:洪水時に堤防の内側(宅地・農地側)に漏水が発生した場合に、漏水の噴出口を中心に土のうを積み囲みます。その時に貯まる水の水圧で土砂の流出を抑え堤防の決壊を防ぐ工法です。

月の輪工:土のうを半円形に積んで水をため、河川水位と漏水口との水位差を少なくすることで、水の圧力を弱め漏水口の拡大を防ぎ堤防の決壊を 防ぐ工法です。

シート張り工:堤防法面が崩れるのを防ぐためシートを張って土のう等でおさえる工法です。

◆越水と溢水(えっすい、いっすい)どちらも水が溢れることを意味しています。国土交通省では、この二つの用語を堤防のあるなしで使い分けています。水が堤防を越えることを越水、堤防無いところで水が溢れだすことを溢水と使い分けています。氾濫も同じような意味を持っています。川などの水が増大し勢いよく溢れ出て広がる事を氾濫と言いますが、一般的によく使われるのは氾濫ですね。
シート張り工

(3)水防団の出動するタイミング

水防団はどのような段階で出動することになっているのかを紹介します。

河川管理者は、管理する河川の大雨時など洪水の危険が迫る際に河川の水位状況に応じて発表する警報、水防警報を発令します。この時、水位の状況をあらかじめ設定されるのが水位危険度レベルです。

●水位危険度レベル:河川の洪水などが発生する際に、周辺住民が的確かつ安全に避難できるように水位を段階的に示したもので、1通常水位、2水防団待機水位、3氾濫注意水位、4避難判断水位、5氾濫危険水位の5つに設定されています。 ●水防警報:水防法に定められ河川の所定の水位に達した際に、防災機関(水防団や消防機関)の出動指針とするために発表されるものです。

水位と警報の関係を示したのが下図です。

我々、住民も避難する場合などの行動を起こすことは自らの命を守る上でも重要であることを改めて認識すべきと思います。それが、自助の根本だと思います。

次回は、前述しましたが自助・共助にも必要な訓練について紹介します。