核シェルターの話(2)

核シェルターの話(2)核シェルターの話(2)

核シェルターの話(2)

元 防衛大学校 教授
矢代 晴実

シェルターの話として、今回は、シェルターの区分や備えるべき性能について、「日本核シェルター協会」のデータより説明いたします。

政府では、2024年3月に「武力攻撃を想定した避難施設(シェルター)の確保に係る基本的考え方について」が発表しています。その後、6月に。政府による2024年の「骨太の方針」が発表され、その中で国内のシェルター整備が重要な施策として盛り込まれ、「シェルター」や「地下施設」という、より具体性を持った言葉が使用されています。


■シェルターの主な種類

シェルターとは「緊急安全確保」が必要な住民に対し、一定期間(時間)について、当該事象から命を守るという、安全な空間であるとされています。その空間で安全確保することを「避難(Sheltering)」と言われます。また、命を守ることにおいて「避難」という言葉の意味は、英語における避難所への一定期間の避難を意味する「Sheltering」と、近隣の安全な場所への退避等の命を守るための緊急的な避難行動を意味する「Evacuation」の2つの意味を含んでいると考えられます。

表1 主なシェルターの種類と特徴

そのようなことで、耐火シェルターをはじめ耐水害シェルターやトルネード・ストームシェルターなどが国内外で設置されています。

シェルターの主な種類として、核シェルター、防爆シェルター、フォールアウトシェルター、ストームシェルターなどがあり、その特徴を表1に示してあります。

核シェルターの定義は、海外ではスイスやイスラエルでは法令や規定があり、米国ではFEMAによるガイドラインがあります。日本においては公的な規定がなく、建築基準法にも記載ありません。有事法制にも位置付けがない状況です。ただ、核が対象にはなっていませんが、2024年3月に政府より「武力攻撃を想定した避難施設(シェルター)の確保に係る基本的考え方について」が発表されています。

表2核攻撃の4種の影響 

核シェルターの建設については、スイスでは、核シェルター関連の法令は、国民の義務や避難指針などの民間防衛の諸法規と関連づけられ、1963年の「民間防衛のための建設手段に関する連邦規則」以降に整備が進みました。また、建築構造の面積・容積、必要なスペースとレイアウトなど、建設指針だけでなく、設備の仕様・運用、点検項目まで、詳細な規格が規定されています。

日本では、地下に窓のない空間を作るためには、建設時の建築確認申請は、「倉庫」や「納戸」で申請を行うしかありません。また、建設施工に関するガイドラインが存在しておらず、ノウハウがない状況です。

スイスで詳細な仕様が決められている理由は、国民保護の目的が、国民の命を守ることであり、核攻撃の際に国民の命を守れないと意味がないという考え方からです。

■脅威と外力

今、核攻撃から守るべきことは、直接人体、建物、設備に被害を及ぼす4項目である「爆風(衝撃波)、熱線(熱波)、初期放射線(α線、β線、γ線、 X線、中性子線など)、残留放射線(誘導放射線放射性降下物)」と、設備に直接被害を及ぼし、間接的に人体に被害を及ぼす1項目であるEMP(電磁パルス)であるとされています。

現在の核シェルターの定義は、核攻撃の影響「4+1」 に対抗するものとされています。

核攻撃における爆風(衝撃波)、熱線(及び閃光)、初期放射線(電離放射線)、残留放射線の4つの影響については、表2に示したとおりです。

また、通常兵器(小火器、砲弾、爆弾、ミサイル)、核兵器、生物兵器、化学兵器、電磁パルス兵器とその外力の関係を示したものが表3になります。

表3 脅威と各種外力