「これも土木」を発見する話(1)

「これも土木」を発見する話(1)「これも土木」を発見する話(1)

「これも土木」を発見する話(1)

(特非)シビルNPO連携プラットフォーム 理事
NPO法人州都広島を実現する会 事務局長
野村 吉春

はじめに

「これも土木」は、前号の「お城における土木の話(3)」まで紹介されてきたところで、少し早いのですが、ちょっと休憩を入れる感じで、今回は「そもそも論」を挟んでみようと思います。

筆者は、常日頃から「土木というモノ、あるいはコト」が、どうも小さくて狭い範囲で捉えられていることに不満を抱いていました。そこに、タイミングよく「これも土木」への執筆依頼が入り、「すわ、書かん!」と意気込むも、「土木」という余りの広がりに、何処から手を付けようかと悩んでしまいました。

■VUCAの時代

VUCAとは、今、はやりの現代用語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことで、「Volatility:変動性」、「Uncertainty:不確実性」、「Complexity:複雑性」、「Ambiguity:曖昧性」の4つの単語の頭文字をとった造語であると説明されています。

今や日本の未来も、世界情勢も、我々の土木界も、この先々が非常に不透明な状況に置かれています。そこで筆者は、そんな恐怖に怯える代わりに、むしろ「これも土木」という、従来の土木に新たな領域を見い出す、そんな「土木のお宝捜し」という乗りで捉えました。

■お宝捜しへのルーツ

つまり、今回の第一話は、「これも土木というお宝探しのルーツ」を皆さまと一緒に考えたいという話です。幕末の坂本龍馬の名句にならえば、そのルーツは何十本でもあるだろうと思いますが、ここでは下図に示すような「7本のルーツ」に着目し、これを掘り下げることにしました。

この図を見ながら、皆様と「狭い土木⇔広い土木」の世界を描いてみたいと思います。

■お宝発見へのガイダンス

「これも土木」へのお宝の発見に向けた「7本のルーツ」を簡単に説明します。今回はガイダンスなので、(読者各位には大変じれったいかも知れませんが・・)具体的な「お宝の発見」は、次回以降のお楽しみとします。この表は「太字の拾い読み」で構いません。

ルーツの代表例お宝探し発見へのガイダンス
見た目での認識大多数の一般市民が見た目で「これが土木」と認識しているイメージを、まずは一旦冷静に受け止めておくことが重要ですね。そのうえで、見た目で「これが土木」とは、必ずしも思われていないモノやコトへの発見も、面白いのではないでしょうか
土木の分野「土木や建築」は一般に「工学系」の分野と認識されています。その分類は、技術士法では「建設部門」に分類され、11の科目が定められていますが、普通の一般市民は知るよしもなく、建築分野の「一級建築士」に比べて、市民には「技術士」の知名度が低いですね。例えば、「建設部門」に定められた11の科目を、つぶさに見ていくと、市民には余り認識されない「これも土木」が、見つかるでしょう
学問として大学受験には「文系と理系」という選択があり、「土木や建築」は「理系」のうち、文科省の11学部の分類の「工学部」に含まれます。しかし、未来へのVUCAの時代を想定するなら、例えば「土木」という学問を、次の3つの連携と広がりで捉えては如何でしょうか1つ目は「工学の連携」・・・まず「工学部」の中で、今を時めくICT、ロボテックス、情報通信、環境、エネルギー、バイオ・・・等々との。2つ目は「理系との関係」・・・「理系」の中でも、例えば地理学、気象学、地球科学、自然科学、生態学、生命科学、細菌・医学・・・等々との。3つ目は「文理融合」・・・「文系」とされる中で、政治、経済、情報、教育、文化・・・等々の「文系との広範な関係」を重視したい。
土木の流れ大枠として「上下分離」という問題意識に着目したい。土木は、社会基盤=下部構造(Infra Structure)という位置づけ、その上部構造(Supra Structure)つまり活用・運営。更に上の企画・構想( Super Architect)は如何だろう。インフラという下部構造だけを捉えても、調査、計画、設計、施工、維持・管理、更新という・・・これらの事業の連続性は如何だろうか。
土木の担い手土木の担い手は、上記の④をどのような分野・業界の人が担っているか? そこに着目すれば「市民社会に果たすべき役割」が適切だろうか
地域の広がり内閣府の調査によれば、一般の市民の「地域への関心」は概ね市町の範囲内とされる。行政や議会も同様な範囲に限定される。しかし、今日の市民社会の活動範囲は、非常に広域展開されている。広域行政は国や都道府県が担当だが、これは選挙区制度なども関連し複雑。「土木と市民社会のつながり」が真っ当に機能しているだろうか。近未来の「人口半減国家」に向けて、更に重要な問題となる。
歴史の時間軸国家統一に向け飛鳥時代には、既に立派な土木が営まれ、道路は高速通信網として整備された。土木の歴史は江戸時代、明治、戦後へ繋がる。近未来の土木にも、飛躍的な発展と展開が期待される

このガイダンスを見て、読者の皆様も「これも土木」について、何かひらめいたでしょうか? 次回からは、具体的に「これも土木」というお宝の発見を幾つか例示します。

以上