「イノシシが泳いできた荒川」三井元子著

「イノシシが泳いできた荒川」三井元子著「イノシシが泳いできた荒川」三井元子著

シビルNPO連携プラットフォーム 代表理事
山本 卓朗

著者の三井元子さんは、CNCPの理事ですが、1954年に荒川放水路の袂で生を受けてから今日まで、荒川で育ち、荒川で学び、荒川で活動し、今なおNPO法人あらかわ学会の事務局長として活躍されている“生粋の荒川っ子”と呼んでよい方です。

その三井さんが、荒川放水路通水100周年記念の年に、この本を上梓されました。ご自身の半世紀も綴られていますが、それはともかく、荒川の歴史そのものの教科書となっているところが素晴らしいと思います。そして関係された多くの専門家へのインタビューなどは土木・河川・環境・都市の専門書としての価値が伺われます。

著者いわく、「荒川のことがすらすらと頭にはいってきて、とても分かりやすかったので、小中学生だけでなく大人にも読んでもらうと良い」というお声を頂いていると・・。

さて“荒川を知る”とはどういうことか。 荒川の歴史をたどると、徳川幕府の利根川の東遷、荒川の西遷という大事業に始まりますが、現在に至るまで大洪水の歴史でもあります。近年では明治43年の大水害で荒川放水路の建設が始まり、昭和22年のカスリーン台風では東京の下町一帯が水没の危機にさらされ、また直近では2019年10月の台風19号でも多くの堤防が決壊し緊迫した対応を迫られました。そして長い年月の中で、河川流域での都市の発展が続き、河川も多岐にわたる改修が行われてきました。

2024年5月8日発行
本の泉社
ISBN978-4-7807-2259-8
定価1800円(税込)

つまり“荒川を知る”とは、単に川の歴史だけでなく、関東地方全体の都市・地域生活の変遷を知ることにもなります。そういう意味でこの本がとても興味深い図書として皆さんにご紹介したいと考えた次第です。