災害廃棄物を分別・リサイクル「災害廃棄物処理」
株式会社鴻池組 土木事業総轄本部
環境エンジニアリング本部
環境ソリューション部
吉岡 由郎

■災害は忘れる間もなくやってくる
「天災(災害)は忘れた頃にやってくる」は物理学者の寺田寅彦の言葉とされていますが、近年、日本では忘れる間もなくやってくる自然災害の脅威に常に直面しています。2011年の東日本大震災から2024年の能登半島地震まで、毎年のように大規模な自然災害が起こっています。こうした大規模災害時に発生する大量の廃棄物は、家庭から出るごみと同じく一般廃棄物として市町村が処理責任を負っています。環境省の基本方針では、災害廃棄物の処理において、環境負荷の低減と資源の有効活用を重視し、可能な限り分別・再生利用を通じて最終処分量を低減することが求められています。私たち一人ひとりも、災害廃棄物の適切な処理と資源化に向けて、意識を高め、行動することが大切です。
■自然災害と発生する廃棄物
自然災害によって発生する廃棄物は、その種類と量が災害の種類や規模によって大きく異なります。被災者生活再建支援法によれば、自然災害とは、「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象により生ずる被害」を指します。こうした災害で発生する廃棄物には、木くず、 可燃物、不燃物、金属くず、コンクリートがら、分別土、ふるい下残渣、家電、処理困難物、危険物などがありますが、最大の問題は多くの場合これらの廃棄物が混合状態で発生することです。
そこで重要となるのが分別です。具体的には被災現場での分別搬出、家屋解体における分別解体、被災 直後に災害廃棄物が集積される一次仮置場での粗選別、それらの廃棄物が集積される二次仮置場では リサイクル先や処分先の受入れ条件に合わせた中間処理(分別・破砕)が不可欠となります。
■分別廃棄物のリサイクル
中間処理された災害廃棄物は、実に多様な形でリサイクルされます。木くずは、ボード材や木質燃料となります。分別された土砂は、復興資材やセメント原料として再利用されます。家電4品目については、家電リサイクル法に基づいて適切に処理されます。また、ソファ・スプリングマットレス、タイヤ、消火器、油類、蛍光灯、ガスボンベ、パソコンといった処理困難物や危険物も、専門の中間処理業者で再資源化が行われます。金属くずは再生金属に、コンクリートがらは再生砕石になります。
どうしてもリサイクルできない廃棄物については、最終的に焼却や埋立処分を行います。
■災害廃棄物処理の一例「熊本地震」(詳細は弊社HP参照)
平成28年熊本地震における災害廃棄物処理の取り組みを紹介します。当社を含む5者からなる連合体が熊本市から処理業務委託を受け、約1年5か月間にわたり中間処理を実施しました。
まず、熊本市、解体工事業協会、連合体の3者で綿密な協議を行い、迅速かつ適正な処理を目的とした解体廃棄物の分別ルール(図-1)を策定しました。図-2に全体処理フローを示します。市内6か所の仮置場に搬入された被災家屋の解体廃棄物は、適正な中間処理工程を経て、コンクリートがら、木くず、金属くずなどの資源物をリサイクルし、塩素系可燃物や不燃物などは焼却または埋立処分しました。
その結果、表-1に示しますように、廃棄物全体約98万トンのうち75.7%にあたる約74万トンをリサイクルすることができました。
写真-1は連結した2台の破砕機による木くずの粗破砕と二次破砕の状況です。写真-2は解体現場で分別できない解体残渣(混合廃棄物)の選別設備全景と手選別の状況です。




■おわりに
災害時において、人命救助が最優先であることは言うまでもありません。しかし、同時に、災害廃棄物の適切な分別とリサイクルは、復興の重要な鍵となります。不幸にも災害が発生した場合には、これまでに私たちが災害対応で培ってきた豊富な知見と経験を最大限に活用して、短期間で効率的な災害廃棄物処理を行うことで、被災地の一日も早い復興に全力で寄与してまいります。