土地の汚染を診断「土壌汚染状況調査の概要」
株式会社鴻池組 土木事業総轄本部
環境エンジニアリング本部 環境技術部
奥村 正孝

■はじめに(土壌汚染って何?)
土壌汚染とは、工場などからの有害物質の漏出や、埋設された有害な廃棄物や、有害物質を元来より含む地層によるものなど、様々な原因から発生します。
土壌汚染の原因となる有害物質には、テトラクロロエチレンやベンゼンなどの揮発性有機化合物、鉛や砒素などの重金属等、農薬、PCB(ポリ塩化ビフェニル)などがあります。
こういった有害物質は、これまで紹介した「土壌洗浄工法」「ジオスチーム法」等を適用した土壌汚染対策を行いますが、その前に、汚染物質は何か、どのような汚染状況であるのかといったことを法律に基づいて調査する必要があります。それが、土壌汚染状況調査です。今回は、調査のきっかけ、調査の流れ、調査の留意点をご紹介します。
※株式会社鴻池組は、土壌汚染対策法に基づく指定調査機関(2003-8-2041)です。
■土壌汚染状況調査のきっかけ
土壌汚染対策法(以下、「法」と言う)で示された土壌汚染状況調査のきっかけとしては以下の3つがあります。
- 有害物質使用特定施設の使用を廃止したとき[調査義務](法第3条)
- 一定規模以上(注)の土地の形質変更を届け出る際に、土壌汚染のおそれがあると都道府県知事等が認めるとき[届出義務:着手する30日前まで](法第4条)
- 健康被害が生ずるおそれがある場合[調査命令](法第5条)
現在の法では、人為的な土壌汚染のみでなく、自然由来や埋立て由来も対象となっており、個別に調査方法が規定されています。
注: 3,000m2以上の土地の形質の変更、または有害物質使用特定施設が、同一敷地内に存在する場合は一定規模の面積が900m2となります。届出後、都道府県知事が土壌汚染のおそれありと判断した場合は調査命令が発出されます。詳細は環境省HPをご参照ください。
■土壌汚染状況調査の流れ
土壌汚染状況調査の流れを以下に示します。

■土壌汚染状況調査の留意点
以下に各調査段階の留意点を示します。
1.地歴調査
・土壌汚染が存在するおそれを判断するため、土地の登記事項証明書・空中写真・住宅地図などの公的資料や過去の調査データ、聴取調査から得られた私的資料も、可能な限り過去に遡り入手することが重要です。
・有害物質の製造・使用・処理だけでなく、貯蔵や保管に関するデータも収集します。
・資料の収集だけでなく、現状を確認するため、調査対象地を実際に歩いて現地調査を行います。
・収集した資料と現地調査から知り得た情報をまとめ、調査の対象とすべき物質と土壌汚染のおそれが想定される範囲を整理します。

2.試料採取等調査
・地歴調査結果をもとに、調査計画を作成したのちに試料採取等調査を行います。
・調査の起点は調査対象地の最北端または最北端が複数ある場合は北東端に設定します。
・10m×10mの単位区画(最大隣接区画と統合して130m2)が最小限となるように区画を設定します。
この時、単位区画の数が起点を視点として回転させることで減少する場合は、単位区画の数が最も少なく、かつ回転角が最も小さくなるように区画することもできます。回転方向は右方向です

・調査起点の位置・座標と回転角は、将来の措置に備えて、記録を残しておく必要があります。
・試料採取等調査は土壌ガス調査と土壌汚染のおそれが生じた位置から-0.5mの土壌の試料採取です。
・特定有害物質が通った配管やピットがある場合は配管下・ピット下-0.5mの調査も実施します。

■おわりに
全6回にわたって、土木における環境技術「土や水をきれいにする土木技術」を紹介しましたが、鴻池組は、これまで様々な汚染物質に対して土壌浄化・水質汚染対策を行った実績と高度な技術を積み重ねてきました。今後も、土壌・水質浄化において、調査段階から計画・設計・施工・運用・アフターサービスに至るまで『一貫した汚染土壌の修復事業』に取り組んでまいります。