橋ってなんだ? ~“あたりまえ”と土木~
土木学会 土木情報学委員会
3D Annotated Model 研究小委員会 小委員長
城古 雅典
■土木情報学委員会 3D Annotated Mode 研究小委員会とは
当小委員会は令和元年6月に活動を開始した.3D Annotated Modelに着目し,自動車業界や電子情報技術産業の活用事例の調査を通じて,建設分野における3D Annotated Model適用による有効性や具体例を提案する活動をおこなっている.
■3D Annotated Modelとは
3D Annotated Modelは,製品の三次元形状に関する設計モデルを中核として,寸法公差,幾何公差,表面性状,各種処理,材質などの製品特性と,部品名称,部品番号,使用個数,箇条書き注記などモデル管理情報とが加わった製品情報のデータセットである1).
3D Annotated Modelは,製品設計部門が責任をもって作成するものであり,製品特性において寸法公差中心から幾何公差中心への切り換えにより,①図面解釈の一義性が保証されることにより,あいまいさや会社の違いが排除され,正確な情報伝達が行われる,②設計効率が向上し,製造・検査コストを削減することができる,③人間が介在しない合否自動判定が行えるようになる,といった効果が期待できる.
また,幾何公差の適用により,公共事業の課題である,①人口減少や少子高齢化による労働者不足,②インフラの老朽化と施設の更新,③生産性の低迷,④技術革新と技術の伝承,⑤防災・減災対策に対して課題解決のための研究を行った2).
■橋ってなんだ? ~“あたりまえ”と土木~
①目的
土木技術者は,人々の生活に必要不可欠なインフラ整備を行う上で重要な役割を担っており,国土の保全や生活基盤の向上などの社会的意義のある職業である.しかし,少子高齢化や人口減少により,その人材が不足してきている.
そこで,将来の職業選択の段階にある小学校高学年の親子の皆様に,身近なところにある「“あたりまえ”の土木」への気づきを通して土木への関心を高め,さらに機能や役割を知ることにより,土木の魅力を知っていただくためのイベントを企画した.
②イベント概要
実施日は令和4年3月19日,主催は3D Annotated Mode 研究小委員会,講師はお茶の水女子大学サイエンスコミュニケーション団体 「おちゃっこLab.」に依頼した.
開催方法はオンライン(Zoom),参加費は無料,対象は小学4年生,5年生,6年生とその保護者,定員はお子様9人で募集したところ,お子様7人の参加となった.
③プログラム
イベントプログラムを表-1に示す.イベントは,講師紹介で始まり,クイズは図-1のイラストを見ながらどんなところに土木と関係するもの(たとえばダム,トンネル,橋など)があるかを答えてもらう内容となっている.
時間 | 内容 |
14:00~14:05 | 講師紹介 |
14:05~14:10 | クイズ |
14:10~14:25 | 橋の説明 |
14:25~14:35 | 休憩 |
14:35~15:00 | 工作 |
15:00~15:10 | まとめ |
橋の説明は,まず橋の形式ごと(けた橋,トラス橋,アーチ橋,つり橋)に,どのような形状をしているか,どのように力が作用しているか,どのような材料が使われているかの説明をおこなった.つぎに荷重については,固定荷重,積載荷重,積雪荷重,風圧力,地震力についての説明を行った,最後に応力については,軸方向力,せん断力,曲げモーメントについての説明を行なった,そして,それぞれ習ったことをワークシートに記入させることにより,理解の定着を図っている.その後,タコマナローズ橋崩落事故の映像を見せることにより,風に吹かれることで大きなエネルギーが発生するというしくみの説明を行うことに加え,未知の現象を経験してくことで,土木の学問は発展してきたということも説明している.
工作は,図-2に示すダヴィンチの橋を作ることとした.ダヴィンチの橋のキットは割りばしで作成し,イベント当日までに参加者の自宅に送付した,最初はお子様全員で作成手順の映像を見せながら縦棒3本での作成を行った.その後2,3人のグループに分かれて,縦棒5本での作成にチャレンジしたり,上部にペットボトルなど事前に準備していたものを乗せたりすることにより,どれくらい耐久性があるか,どんなふうに力が伝達されているか,また,もし壊れた場合,どのような壊れ方をするかを観察することにより,新たな気づきに着目し,思考することを期待している.
④アンケート結果
講演内容については,とても満足した(72%),満足した(14%),あまり満足していない(14%)となっており,概ね良い評価が得られた.
土木への興味については,とても興味を持った(43%),興味を持った(43%),あまり興味を持たなかった(14%)となっており,概ね良い評価が得られた.
工作(ダヴィンチの橋)を作ってみた感想について,楽しかった(29%),うれしかった(14%),難しかった(57%)となっており,少し難しかったようであった.
オンライン(Zoom)での開催については,とても良かった(71%),良かった(29%)となっており,良い評価が得られた.
最後に,本イベントが,参加者の皆様にとって土木について学ぶきっかけとなり,ご家庭での土木に関する話題の増加につながることを願っている.
⑤今後のイベント
今年の8月に「橋ってなんだ?」を行う予定である.また,以前行った「Damってなんだ?」や新たな土木構造物に対するイベントも検討中である.イベント告知は当小委員会のホームページとTwitterで行いますのでそちらを参照いただければと思います.
ホームページ:https://committees.jsce.or.jp/cceips29/
Twitter:https://twitter.com/3DA_Committee
■参考文献
- 一般社団法人電子情報技術産業協会 三次元CAD情報標準化専門委員会:3DAモデル(3次元CADデータ)の使い方とDTPDへの展開,pp.2-3,日刊工業新聞社,2021.1.
- 城古雅典,森脇明夫,宮本勝則,福士直子,矢吹信喜:幾何公差の3次元での適用に関する文献調査と公共事業の課題解決に対する提案,土木学会論文集F4(建設マネジメント),Vol.75,No.2,I _1-I_14,2019.