日本工営株式会社/事業戦略本部 事業開発部/(共催:豊田市役所、クラスター株式会社)
鈴木 雅大

1. 日本工営のメタバース事業について
建設業界において3次元データの利活用は、BIM/CIMの原則適用の開始による自動設計の進展、国土交通省主導の「Project PLATEAU」によるデジタルツイン技術の適用拡大等を受けて、着実に進んでいます。そうした流れの中、かつてゲームの世界や一部の消費者向けマーケティング・サービスでの利用が主流であったメタバース(仮想空間)関連技術についても「黎明期」を迎え、試験的な導入が始まっています。
日本工営では、メタバースを「マーケットイン志向の次世代技術開発」と位置付け、顧客ニーズに応じて付加価値の高いコンテンツ制作や、関連アプリケーションの開発にも取り組んでおります。当社は、総合コンサルタント企業として防災・交通・観光など、さまざまな分野におけるソリューションの社会実装を推進しています。
2. 「3.11防災を楽しく学ぼう in メタバース」について
日本工営は、「豊田市つながる社会実証推進協議会」に加入し、豊田市が運営する「メタバースとよた」の有効的な活用方法について豊田市と議論を重ねてきました。
本取り組みでは、属性を問わず全市民が参加しやすい「防災」をテーマにイベントを開催し、市民の防災意識向上を図るほか、メタバースを活用することによる情報発信の有効性や、市民参加を促すメタバースの活用方法などについての効果検証を行いました。
●メタバースとよたについて
豊田市は、「豊田市メタバース将来ビジョン」に基づき、「メタバースとよた」を国内最大級のメタバースプラットフォーム「Cluster」上に構築し、2024年12月より本格運用を開始しました。「メタバースとよた」は全国で唯一の政策分野横断的なメタバースで、市民や企業、行政、団体がコミュニティ形成や情報交換、実証実験を目的としたイベント等を行うことができます。 今年度以降はメタバースとよたが様々な目的で活用され、地域全体でメタバースを活用していけるよう年間10を超えるイベントの実施を計画しています。「地域全体でチャレンジできるメタバース」を目指し、様々な活用方法を検討し、市民・企業・行政が一体となったメタバース事業を推進しています。

●イベント概要
イベント名:3.11防災を楽しく学ぼう in メタバース
日時:令和7年3月11日(火)午後6時~7時「東日本大震災追悼の日」
場所:メタバースとよた つながるアリーナ(イベントエリア)
講演内容:
・地震発生時における被災リスクに関する講演(日本工営 防災マネジメント部 反町部長)
本講演では、大規模地震が発生した際の人的被害や身の回りで発生する被害、地震発生前にできる
備え等について説明しました。また、メタバースを多く利用すると思われる若い世代の人たちも、過去の大規模地震で被害にあっていることを紹介して、参加者の防災意識を高めました。
・大雨の際の減災につながる事業PR(豊田市 河川課 岡田様)
豊田市では、今後発生が想定される大規模災害に向けさまざまな取組を実施しています。本講演で
は、豊田市内で発生が懸念される洪水に対する取組として「3D洪水ハザード情報」を紹介しました。
・防災を楽しく学ぶクロスロードゲーム (豊田市 防災対策課 中島様、未来都市推進課 水谷様) 本講演では、豊田市防災対策課で行っている出前講座「防災ゲーム(CROSSROAD~クロスロード
~)」をメタバース空間内で実施しました。防災に関する○×クイズを実施するほか、チャットを利用し参加者との意見交換を行いました。

4. イベント開催結果について
今回のイベントでは、豊田市民のみならずClusterアプリの「開催中のイベント欄」や「フレンド機能」により本イベントに参加された既存ユーザーも多数おり、結果的に122人がメタバースとよたに集まりました。メタバースを活用することにより、さまざまな属性の方にアプローチすることができ、「情報発信の場」として有効であることを確認しました。
また、参加者から回収したアンケートでは、「場所を問わず集まれるイベントだったので気楽に参加できた。」や「気軽に家で家事をしながら参加できた。」などの意見をいただき、「市民参加の促進」の観点でも一定の効果を得ました。
その他にも、従来のオンラインイベントでは一方通行になりがちなコミュニケーションが双方向で展開されたことや、「イベントに参加している実感が沸きやすい」ことで、参加者を長時間イベントに滞在させることにメタバースは効果を発揮することを確認しました。
※アンケート回答者の95%以上が「イベントに参加している実
感が沸きやすかった」と回答
※最大同時接続数:78人、平均滞在時間:44.6分


5. 本イベントの開催意義
●豊田市役所 未来都市推進課 中村大樹様
日本工営様とのイベントは、メタバースとよたで実施したイベントでは初めて、企業と連携したイベントとなりました。平日の18時から19時という時間帯でのイベントで、100名を超える方に参加いただき、リアルの空間では実現が難しいメタバースならではのイベントとなりました。また事前申し込みの段階では40名程度の方から申し込みがあった程度なので、当日の集客というところでメタバースプラットフォーム「cluster」上でのイベント告知(当日アプリ上で告知)もかなり集客できるコンテンツだと感じております。防災というテーマについて、新たなターゲット層(子育て世代)へのリーチができるツールとしても良く、より柔らかい雰囲気で防災を学べる場となりました。
また、アンケートの結果としても、8割を超える方から良い結果をいただき、今後も楽しく防災を学べるコンテンツとしてメタバースの活用可能性を感じました。
今後も日本工営様をはじめとした企業と連携しながら、防災イベントやその他のイベントでの活用に向けて取組を進めてまいります。
●クラスター株式会社 加藤大哉様
今回の「3.11防災を楽しく学ぼう in メタバース」は、メタバースの特性を活かした防災教育の新たな可能性を示すイベントでした。物理的な制約を超えて豊田市外からも多くの参加者が集まり、幅広い層に体験していただいたことは大きな成果です。特に印象的だったのは、豊田市職員から「普段、Zoom等のオンラインセミナーだとコメントがあまり集まらないのに対して、メタバースを活用したら数百単位でのコメントが集まった」という声をいただいたことです。アバターによる、匿名性と親しみやすさが、参加者の皆様が発言しやすい環境を醸成しました。これにより、活発な意見交換とインタラクティブな体験が促進されたことを実感しております。 クロスロードゲームにおけるチャット機能を用いた意見交換では、参加者の皆様によるリアルタイムのコミュニケーションが活発に行われ、メタバース空間ならではの双方向性の価値が実証されたと考えます。今後は災害体験など、より没入感のある防災教育において、メタバースの強みを最大限に活かした社会実装を推進してまいります。
参考文献
メタバースプラットフォームCluster:メタバースとよた はじまりの広場(リンク) /
豊田市メタバース将来ビジョン(リンク) / 豊田市3D洪水ハザード情報(リンク)