つなぐ活動 川ごみ・海ごみに関する出前授業

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川ごみ・海ごみに関する出前授業

全国川ごみネットワーク 理事
仲井 圭二

1.川ごみ・海ごみに関する出前授業

全国川ごみネットワークでは、独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金企業協働プロジェクトのLOVE BLUE助成を受けた活動の一環として、2021年度に、首都圏の小学校6 校を対象にして、川ごみ・海ごみの出前授業を行いました。2020年度に、東京都の4区(江戸川、葛飾、江東、墨田)、3市(東久留米、東村山、東大和)、埼玉県の3市(朝霞、志木、和光)の254の公立小学校に出前授業を希望するかどうかのアンケートを行って、59校から回答を得て(回答率23%)、出前授業を希望する学校を中心に、6校を選定しました。6校の一覧を表1 に示します。

表1 出前授業を行った小学校一覧

実施日自治体学校学年内容
2021年5月14日埼玉県志木市宗岡第三小学校4授業
2021年7月2日東京都江戸川区篠崎第三小学校6篠田堀親水緑道の清掃活動の事前学習
2021年8月31日東京都杉並区井荻小学校6善福寺川清掃と振り返り授業
2021年10月14日東京都墨田区二葉小学校5授業
2021年10月21日東京都葛飾区宝木塚小学校4荒川の清掃見学と振り返り授業
2022年1月17日東京都墨田区菊川小学校5授業とワークショップ

2.授業内容

事前に学校側の要望を伺いながら、以下の内容で授業を構成しました。

●川ごみ・海ごみに関する知識を伝える授業

●川の清掃及び清掃後の振り返り、清掃前の事前学習

●ごみを減らすために何ができるかの意見発表

知識を伝える授業の中では、どの学校でも、海のごみによって、亀やアザラシ、コアホウドリやクジラなど、海の生物がプラスチックごみを誤って食べてしまったり、捨てられたプラスチックごみに絡まって抜けられなくなったりして苦しんでいる事例を紹介しました。海の生物が、私達のごみによって苦しめられていることに心を痛めた子供も多かったようです。

海底に沈んでいる多くのペットボトルの写真や、今のように、ごみの海への流入が続くと、2050年にはごみの量が魚よりも多くなるという予測に、子供たちはとても驚いた様子でした。

対象が小学生なので、単に知識を伝えるだけでは疲れてしまいます。そこで、子供達に、アザラシや亀になってもらい、プラスチックの網が絡まってしまう体験をしてもらいました(写真1)。我々人間は、たとえ網が絡まっても手を使って外すことができますが、手のない動物達は、網から抜け出すことが非常に難しいことを、遊びを通じて体験してもらったものです。この体験はなかなか好評で、授業に笑いと楽しさを添えることができました。但し、これが通用するのは5年生くらいまでのようです。

写真1 プラスチックの網が絡まる体験

3.川の清掃体験

6校のうち3校では、子供達に清掃体験または見学をしてもらいました。川は私達が住む地域にありながら、なかなか近寄る機会がなく、「近くて遠い存在」である場合もあります。そのため、実際に川の近くに行って、どんなごみがどんな風に落ちているのかを見てもらうのは非常に意義あることです。

宝木塚小学校では、当初子供達にごみ拾いをしてもらう予定でいましたが、コロナ禍の影響で、当ネットワークの講師と先生方でごみ拾いを行い、子供達はそれを見学するという形を取りました。

それでも、子供達には初めて見るものも多く、刺激になったようです。川岸の遊歩道脇には、空き缶やびん、ペットボトル、お菓子や食品の包装、食品のトレイなどが見られ、「このごみはどこから来たと思う?」と問いかけてみると、「上流から流れて来た」、「散歩してる人がポイ捨てした」と元気のいい答えが返って来ました。タイヤを発見して、なぜタイヤがこんなところにあるのだろうと驚いている子もいました。遊歩道の上には、木のかけらや枯草、土に混じって、プラスチックの小さな破片が見られる場所がありました(写真2)。マイクロプラスチックを実際に川で見ることができたのは貴重な経験でした。

写真2 荒川のマイクロプラスチック(堀切水辺公園)

4.ワークショップ

菊川小学校では、通常の授業に加えて、身の周りで何がごみになるのか、ごみを減らすために何ができるのかを子供達に考えてもらうワークショップを開催しました。5人程度の班に分かれて、自分達の考えをまとめて発表してもらうものです。

使い捨て製品がごみになることはもちろんですが、そうでないもの、例えば、毎日着ている洋服や、勉強に使っている定規や下敷きも、長く使って傷んで来るとごみになります。つまり、時間が経つと、大抵のものはごみになる可能性があることに多くの子供達は気付いてくれたようでした。

ごみを減らすために何ができるかについては、ペットボトルを買わずに水筒を持って行く、古くなった衣類を親戚や知り合いの子にあげる、3Rの中でもreduce(ごみの削減)を優先するなど、日々の生活の中ですぐできそうなことを沢山挙げてくれました。子供の自分達でもできることがあると気付いてくれたことは大きな収穫であると考えています。

写真3 ワークショップの様子

5.最後に

出前授業は、子供たちに考えて、行動してもらうということが大きな目的の一つですが、授業のことを家に帰って家族に話してもらうということも期待しています。子供の口からごみを減らしたいという言葉を聞いた大人は、普段の生活でごみを減らすことに、改めて意識を向けてくれるのではないでしょうか?

海や川のごみを減らすために、これはという妙案がある訳ではありませんが、ごみのことに関心を持って行動してくれる人を増やして行くという地道な行動が大事です。そのために、これからの日本を支えて行く子供達に、ごみのことをこれからも伝え続けて行きたいと考えています。

本事業は、当ネットワークの伊藤浩子氏、菅谷輝美氏と共に担当しました。また、各校周辺で活動する地元の市民団体の方々からもご協力頂きました。関係各位に対し、ここに深く感謝いたします。