四国防災八十八話マップ!~防災・災害伝承活動と“つながり”創出~四国防災八十八話マップ!

四国防災八十八話マップ!~防災・災害伝承活動と“つながり”創出~四国防災八十八話マップ!四国防災八十八話マップ!~防災・災害伝承活動と“つながり”創出~四国防災八十八話マップ!

四国防災八十八話マップ!
~防災・災害伝承活動と“つながり”創出~四国防災八十八話マップ!

徳島大学環境防災研究センター 教授
四国防災八十八話・普及啓発研究会 代表
上月 康則

■マップづくりのきっかけとねらい

 四国は水害、高潮、地震津波、渇水とさまざまな自然災害に見舞われてきた地域ですが、同時に災害の様子や対応を伝える石碑や古文書も数多く残されてきました。最近、全国各地で未曽有の津波、水害などの被害が起こっていますが、防災学習の観点からこうした資料が改めて評価されているようです。四国の災害に関する言い伝えや体験談は『先人の教えに学ぶ 四国防災八十八話』(企画・発行:国土交通省四国地方整備局)1)にまとめられていましたが、「この内容をもっと多くの人の防災に活かしてもらいたい!」と考え、『四国防災八十八話マップ』(写真1)を制作しました。

このマップは四国防災八十八話・普及啓発研究会が企画し、(一社)四国クリエイト協会に協賛を頂き、徳島大学環境防災研究センターが発行しています。またマップ制作にあたって配慮した点は、「手に取ってみてみよう」という親しみやすさで、全ての話をわかりやすいイラストで表してみました。その結果、ありがたいことに2021年3月にはじめて徳島版を発行して以来、毎月のように講演や防災フェスタへの出演依頼を受けており、少しは皆さんの生活防災に役立ててもらっているのかとうれしく思っています。

写真1 四国防災八十八話マップ(徳島県版)

■新しい学習プログラムづくり

依頼される学習会の対象者は高齢者から幼児まで幅広く、私たちはそれぞれにプログラムを作ってきました。その中でわかってきたのは、どのような世代であっても“問いかけと意見を聞く”ことの大切さでした。例えば、子供にイラストを見せて「これは、どんな場面だと思う?」「この後どうしたらよいと思う?」と問いかけをすると、自身で考え、意見を言ってくれるので、双方向の学び・気づきの場がつくられていきました。また幼児向けには、親子で3m×4mに拡大印刷したマップの上に乗り、スクリーンに映し出されたイラストと同じものを探し、「このイラスト中のキャラクターは何をしているの?」について考えてもらいました(写真2)。探しだす楽しみを子供が感じ、内容を理解し、子供に伝えることで親の防災への理解も深まり、防災への興味関心はそれぞれに高まっていたようでした。

写真2 大きなマップの上での学習

■マップで“つながり”を創る!

「子供たちが楽しく防災学習をしているらしい?!」という口コミで、行政、学校、企業、自主防災組織などから、さまざまな依頼を頂き、つながりが生まれました。例えば、徳島県阿南市小学校での防災学習会をきっかけに、阿南市教育研究会とつながり、共同して四国防災八十八話の紙芝居を作成しました(写真3)。現在この紙芝居は市内全小学校での防災学習に使われています。また内容理解と定着を確実にさせるための工夫として、カルタに書かれた伝承の内容を描いてもらう全く新しい「お絵かき災害伝承カルタ」とその学習プログラムも開発しました(写真4)。他にも、“実際に行ってみよう!”を推すために現地ツアー(写真5)や徳島県とくしま地震防災県民会議と、四国防災八十八話のデジタルスタンプラリー(写真6)も実施しました!

防災啓発の結果として私たちの想定外であったことは、IT企業や保険会社といったこれまで研究上でお付き合いのなかった方々から「地域課題の解決の糸口にマップを使いたい」という申し出があったことです。従前より、レジリエンス力を高めるための課題の一つに、“新しいつながりの創出”がありましたが、このマップにはそうした働きもありそうです。例えば、①時代をつなぐ、②地域をつなぐ、③異世代をつなぐ、④異分野をつなぐ、といったマップの4つの“つながり”です。今後は、こうした“つながり”の観点からも四国防災八十八話マップを見ていきたいと思っています。

なお、こうした新しいイラスト防災マップの制作と防災・災害伝承活動の意義が評価され、2021年度末には土木学会土木広報大賞2021「最優秀賞」、2022年末には日本沿岸域学会「出版・文化賞」を頂きました。

写真3 紙芝居の読み聞かせ
写真4 お絵かき災害伝承カルタゲームでの学習
写真5 マップ現地ツアー(水害伝承うつむき高地蔵)
写真6 デジタルスタンプ

■これからの四国防災八十八話マップ!

現在、四国防災八十八話マップは、2022年7月には香川県版(協力:香川大学危機管理先端教育研究センター)を、2023年6月には高知版(協力:高知大学防災推進センター)をそれぞれ発行し、各県で活動を行っています。さらに愛媛県板ができた時には、四国4県の四国防災八十八話マップ・フェスタを行うなどのイベントも構想しています!

最後に、本稿でご紹介した四国防災八十八話マップやゲームは「四国防災八十八話倶楽部(https://shikokubousai88wa-t.amebaownd.com/)」のホームページ2) からダウンロード可能ですので、ご興味のある 方かたはご活用ください。

参考資料

1)国土交通省四国地方整備局:(2008)先人の教えに学ぶ 四国防災八十八話、2008年

2)四国防災八十八話倶楽部ホームページ:https://shikokubousai88wa-t.amebaownd.com/