「美し国への景観読本」 -(特非)美し国づくり協会20周年を期に-「美し国への景観読本」 

「美し国への景観読本」 -(特非)美し国づくり協会20周年を期に-「美し国への景観読本」 「美し国への景観読本」 -(特非)美し国づくり協会20周年を期に-「美し国への景観読本」 

シビルNPO連携プラットフォーム 常務理事/事務局長
田中 努

編著の「NPO法人 美し国づくり協会」は、CNCPの法人会員で、協会理事の西山英勝さんは、CNCPの理事です。「美し」は「うまし」と読みます。

この本の初版発行は2012年ですが、今年2025年1月に法人化20年を迎え、美し国づくり協会20周年記念誌「美し国づくりの未来像」をまとめられましたので、それを機に、本書の書評を投稿します。

本書は、理事長の「序」、前江戸川区長と理事長との「対談」、理事と賛同者22名の「意見・論」、「我が国の景観行政の取り組みの経緯と現状」の4部構成になっています。

「序」は、「近代以降の東洋の知識人は、何事につけ西洋秩序を理想と考えてきたようだ。あらゆる科学技術を、西洋に学んできたのだから無理もない。」「元来、東アジアの自然風土、生物気候などに支配されてきた環境、社会、文化を、具体的には都市や農村の姿や生活のあり方までを、すっかり西洋にしてしまった。」で始まります。

2004年に成立した「景観法」により、全国の自治体で、色彩基準、看板撤去、電線の地中化などを叫ぶ定型的な景観問題認識が生まれ、落ち着いた景観や乱雑な景観の改良に繋がったが、住民にとって、この地こそわが町と誇れる、来訪者にとって印象深くまた訪ねたくなるような町ともなるような“個性と魅力あるまちづくり”には繋がらないだろう・・と言います。

そもそも、「人類の祖先たちは、それぞれの自然風土の下で独自の生存環境を整備し、その究極の理想像を描き出した。」エデンの園・アルカディア・極楽浄土・桃源郷・・等々。「これらの理想像には、共通性と普遍性が見いだせるが、同時に、自然風土、材料、技術などと民族や宗教の相違、さらに言えば独自の景観性などの個性が見いだせる。」つまり、そもそも、人類は、皆同じものを求めている訳ではなく、多様であるということでしょう。

「序」の最後では、3つの多様性が重要であると述べています。1つは自然的環境の持続のための「生物多様性」、2つめは人間の社会的環境の持続のための「生活多様性(多言語・多文化・生き方など)」、3つめは文化的環境の持続のための「景観多様性」。どこの国、どこの地方、どこの都市、どこの村も、どの家、どの庭、どのくらしも「みんなちがって、みんないい」・・と。

現在、山本代表とCNP賛助会員の建設会社数社と、「適疎な地域づくり」の勉強をしています。過密都市の中にも「適疎な地域」があり、過疎の村にも「適疎な地域」がある。そういう地域を探し、仲間とつながり、「適疎な地域」の普遍的なものと個性的なものを知り、「適疎な地域」を日本中に増やしていきたいと考えています。本書の「生物・生活・文化の多様性」「みんなちがって、みんないい」と、通じるものがあります。

是非、ご一読をお薦めします。

2018年5月31日初版第2刷
発行 日刊建設通信新聞社
ISBN978-4-902611-44-1
定価1200円(税別)