キッズPJってなに?
土木学会 教育企画・人材育成委員会 キッズPJ検討小委員会 委員長
日本大学理工学部 交通システム工学科 准教授 江守 央
1.はじめに
土木学会/教育企画・人材育成委員会のキッズPJ(プロジェクト)小委員会では,小・中学生に対する出前授業(理科・社会)を中心に,高校生(普通科)も視野に入れた学習支援活動を継続的に実施していくことを目標に,全国にいる小委員会メンバーによって,僅かながらですが,教育貢献を続けています.
この背景には,例えば,小学生では2002年から「総合的な学習の時間」で自由なテーマから自主性を育む時間が設定されたことから,我々の「土木」や「交通」といった,目立たないけど日常生活に必要な分野に,小さい頃から興味を持ってもらうことで,次世代の技術者の確保・育成に非常に貴重な機会と捉えています.また,併せて小・中学校の教諭の方々にも,「土木」や「交通」といった世界を知ってもらいながら,業界のファンになってもらうことも狙っています.これらを含めて我々は「PJ(プロジェクト)」と呼んでいます.
その上で,出前授業(小・中学校・普通科高校生などで実施したことのある教員以外の人材)の経験者を発掘調査し,連携を図っていきたいと我々は考えています。さらに,この展開として,近年では地域公共施設・図書館等との連携を模索し,夏休み学習の支援やイベントなどに協力を提供する場面も出てきています。
2.実践内容
「土木」「交通」といった横断的な知識と思考力を養うテーマを意識してその実施例として,
・「観光学習」:フィールドワークから調査・収集した情報を収集し,これを基に「お勧め観光マップ」を作成【写真-1参照】
・「環境学習」:身近な河川に出向いて水質調査(水の汚れ調べ)や水生生物の調査の仕方を実践で学習
・「防災学習」:ハザードマップを用いて地域の防災施設のグループ学習で実践
・「計測学習」:長さを測る演習を実施して,準天頂衛星や測量機器の紹介とレーザースキャナー計測を実演
・「体験学習」:パーソナルモビリティの乗車体験を実施
などを実施しています.これらテーマは各委員の専門分野から持ち寄りで設定して,出前で講義やイベントを実施しています.
このなかで,主体性や多様性,協働性といった学習指導要領等が求める育成すべき資質・能力に対応していくものとしています.参加人数としては1クラスの約30名から,イベントとなると600名ほどの参加があるものもあります.
このような,非常に限られた時間のなかで全てを教育することは難しく,教材の開発やマンパワーの確保など苦慮するところもあります.
3.これから
AIや可視化技術などのICT技術の進展やグローバル化といった急速な社会の変化に対応すべく,小・中学校の教育・カリキュラム自体の変革も進んできています.特に主体性や多様性といった非常に実施も評価も難しい対応されている現場の教諭の方々は非常に苦労されていると聞いています.
さらに,現代社会が抱える例えば災害などの非常時対応など,実社会のさまざま場面で活用できる汎用的な能力を養うことも目標とされています。例えば,「総合的な学習の時間」における小学校の具体的な学習内容として,「国際理解」「情報」「環境」「福祉・健康」「地域の人々の暮らし」「伝統と文化」「防災」が概ねを占めるわけですが,これらに「土木」や「交通」とった分野は非常に親和性が高いと思っています.このように将来の技術者となる児童・生徒たちの教育をプログラムすることを「PJ(プロジェクト)」できたらと考えています.
<参考>
1)文部科学省:小学校学習指導要領(平成29年告示)解説・総合的な学習の時間編:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/064/siryo/__icsFiles/afieldfile/2016/05/23/1370879_5_1.pdf
2)国土交通省関東技術事務所建設技術展示館:http://www.kense-te.jp/observe/2019/08/05/4482/
<小委員会ホームページ>