「“適疎”な地域づくり」を推進したい
-もう一度過疎と過密を考える-
シビルNPO連携プラットフォーム 代表理事
山本 卓朗
さて表題の「適疎(てきそ)」という言葉ご存知でしょうか?
CNCPでは、賛助頂いている中堅ゼネコンの方々と「社会的課題に建設業がどのようにかかわるか」という小さな研究活動を行ってきました。そして現在取り組んでいるテーマが「“適疎”な地域づくり」。この通信を皮切りに様々な情報を発信し、皆さんにも議論に加わって頂くことを希望しています。
「適疎」は、過密でもなく、過疎でもない、適度に疎らな状態をいう“造語”ですから、辞書にも載っていません。私の知識もまだ付け焼刃・・・自分の言葉を持ち合わせていないので最初に引用させて頂いた参考文献から紹介します。
1)「コミュニティデザインの時代」山崎亮 中公新書 2012.9
2)適疎とは? 無印良品 くらし研究所コラム ネットより
3)毎日新聞 社説 2022.1.15 ネットより
4)NHK札幌 ほっとニュース 2022.1.28 ネットより
5)「“働き方の変革”で過疎地域は変わるのか」北海学園大 浜田武士教授 ネットより
6)Yahoo!ニュース ちょうどよい「適疎」の町へ―― 北海道東川町、人口増の秘密 ネットより
山崎亮氏が本書1)で、「適疎」を目指して・・・と書いたのが、既に10年前ですから、昨日今日の話ではありません。でも「適疎」が脚光を浴びてきたのは、やはり「コロナ過」で東京への流入人口に変化が見え、地方移住も進んでいるという報道が見られるようになってからと思います。しかし、ことはそんなに簡単ではありませんね。東京一極に人口が集中してきたのは、そのメリットが巨大であって通勤ラッシュなどのデメリットをはるかに凌ぐからでしょう。もちろん東京一極集中は、長期的に見て拙いことは明らかであり、長年にわたり国土計画として、首都機能移転、地方創生など数多の政策に真剣に取り組んできたことも周知のとおりです。しかし怒涛の如く進む一極集中とそれを享受する経済活動を全国に分散して配置しようとするパワーが足りなかったというとことでしょうか。ではどうするか?
浜田武士教授の論文5)の中から「過疎地域にこそ必要な多様な働き方」の一部を拝借します。
「・・・首都圏には集積が集積を生む強い集積構造が働いている。企業の本社や首都機能を分散させる奇策がない限り、人口を地方に分散させようというのは現実的ではない・・・ならば、東京一極集中の是正を目的にするのではなく、少しでも地方に移り住みたいと考える人たちがスムースに移住できる社会を構想する方が無理のない話かのように思える・・・。」
人口減少化での地域再生はとてつもなく難しい課題と思います。しかし、アフターコロナの有力な知恵である「“適疎”な地域づくり」は、その成り立ちからしても主役は地域住民であり、賛同する各地域の連携による全国的な運動に発展させていくことで“大化け”するのではと考えます。
説明の順序が逆になりましたが、「適疎な地域づくり」のトップランナーである、人口が増え続ける小さな町、「適疎」をめざす北海道東川町の松岡町長が語っている記事「人口増の秘密」6)を引用します。
「東川町は、“過疎”ではなく、人口8000〜1万人のあいだで、ちょうどよい“疎(そ)”のある “適疎”の町をめざしています。東川らしい暮らしというのは、“疎”があること、つまり間(ま)があることだと思います。都市とは違うゆとりのある空間と時間、そして顔の見える仲間との関係性があることが、これからの暮らしの豊かさになるのではないでしょうか。」
■「適疎(てきそ)な地域づくり」への提言
■関連情報
#適疎な地域づくり(CSV研究会)
シビルNPO連携プラットフォーム 代表理事 / 山本 卓朗
「適疎(てきそ)な地域づくり」への提言(案) ―過疎と過密の議論を超えて-
土木と市民社会をつなぐ事業研究会 / (略称:CSV研究会)
「適疎な地域づくり」を目指して その4:地域づくりの主役は誰か
土木と市民社会をつなぐ事業研究会 / (略称:CSV研究会)
「適疎な地域づくり」を目指して その3:地方創生法の誕生・人口・豊かさと幸せの相関
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「適疎な地域づくり」を目指して その2:「失われた30年」とは何か?
土木と市民社会をつなぐ事業研究会 / (略称:CSV研究会)
「適疎な地域づくり」を目指して その1:「適疎」ってなんだ?
木と市民社会をつなぐ事業研究会 / (略称:CSV研究会)